俺様主人は時に甘い


だから高校では心機一転、頑張ろうって思ってたのに……この様だ。


もう一人は嫌だよ…



だから、何としてでも学校に行かなきゃいけない。


私は怠い体にムチ打って起こすと、階段を降りてリビングに向かった。



「お母さん…は、仕事だっけ」



一階はシンと静まり返り、空気が若干冷たく感じる。


テーブルにはいつものように手紙とお金が置いてあって、私はそれを手に取った。



「今日も遅くなります、か」



昨日のメモをそのまま使い回したんじゃないかと思うぐらい、いつもと変わりのない簡素な内容の手紙。


一緒に置いてあるお金は、今日の昼と夜の食費だ。




うちには父親がいない。


私が小さい頃、事故で亡くなった。


お母さんは特別養護老人ホームでケアマネージャーをしながら、女手一つで私をここまで育ててくれた。


朝から晩まで働いて、月に2回夜勤がある。


仕事の日は時間が合わず、顔を合わせることはない。