「ミヤ!来いっ」
「え?ちょっ…!」
先輩は私を強引に引っ張って、そのまま社会科準備室を出た。
準備室を出る瞬間、先生が呆れたようにため息を吐いた姿が目に入った。
「先輩!離して下さい!」
手を引かれるまま階段を幾つも登る。
私の話など、当然の如く聞いてはくれなくて。
疲れて俯いた途端、視界が明るくなって思わず目を瞑った。
連れてこられたのは屋上で、空はほんのり赤く染まり出している。
先輩は私の手首を掴んだまま、私と向き合うと、瞬きもせずに真っ直ぐ見つめてくる。
その瞳がやけに綺麗で、心臓が跳ね上がった。
「この間は……ごめん」
この間?
それって、キスしたこと?
「泣かせたかったわけじゃない」
そう言って、先輩は手首をキュッと握り直した。
「嫉妬したんだ。陽平に」
「先生に?」
先輩の言ってる意味が今一よくわからない。
なんで先輩が、先生に嫉妬するの?
嫉妬して、なんでキスなんてするの?

