俺様主人は時に甘い


「先生!」


「ん?」


「私、先生にっ、」


「うん」


「先生に、だ…だだ……抱き……めて、ほ…い……です」



膨れ上がった風船が一気にプシューッと萎むように、私の意気込みも語尾になるにつれて萎んでいく。



「だきめて?」



先生の頭上にはてなマークが見える。


ああぁぁっ‼︎馬鹿馬鹿馬鹿!


なんで最後の最後で萎んじゃうかな…



誰か私に勇気と勢いをくださいっ…



「えっと、“だきめて”じゃなくて…その……」



よし。頑張れ、私!


大胆になるんだ!


その他大勢から抜け出すんだ!



言う決心をすると、スゥーッと息を吸い込んだ。



「少しでいいので、ギュって抱き締めーーー」



やっとの思いで振り絞った勇気で言い掛けた、その時。



バタンッ‼︎‼︎



「おい!ミヤ‼︎」



ドアが乱暴に開かれると、酷く慌てた笠原先輩が声を上げて社会科準備室に入ってきた。