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いつものように鈴菜と弁当を食べていると、ジャージ姿に軍手をした先生が何度も廊下を行ったり来たりしていた。


時に箒とちりとりを持ってたり、時にバケツを持ってたり。


何処かの掃除だと思うけど、何度もバケツを変えてるあたり、かなりの大作業だと思う。


廊下ばかりを気にしていると、鈴菜が「そんなに気になるなら話し掛けてこい!」と私を廊下に追いやって。


私は意を決して、水道でバケツの水を汲み変えてる先生に話し掛けた。



「先生、何処かの掃除ですか?」


「ああ、落合か。社会科準備室の掃除をね」


「一人でですか?」


「社会担当の先生達と勝負で負けてね。俺、弱いんだよな〜。ジャンケン」



そう言って、先生は苦笑いを浮かべる。


苦笑いでもきゅんと胸が反応しちゃう私は、相当ヤバい。



「あ…先生、袖が」



汚水を流し、バケツの中をゆすぐ先生の捲ってあったジャージの袖がスルスルと落ちて、少し濡れてしまった。