俺様主人は時に甘い


「そうですか。では、先に行って下さい」


「は?」


「私、後ろをぴたっとくっつかれて歩かれるのは好きじゃないんです。だから、先。どうぞ?」



壁際に寄って、先輩に道を譲る。


だけど、先輩は一向に先に行く気配はなく、それどころか「チッ」と舌打ちまで聞こえた。



「お前、喧嘩売ってんの?ペットのくせに」


「ハッキリ言っておきますが、私はペットになった覚えはありません」



こういうのはハッキリ言っておいた方がいい。



勝手にペット呼ばわりされて、ホント迷惑。


ペットになるにしたって、先輩みたいなご主人様は選ばないっつーの!



「へぇ、そんなこと言っていいんだ?」



先輩はニヤッと笑うと、得意げにそう言った。



「だって本当のこと……ですし」



語尾が徐々に弱くなる。


それもそのはず。


私にジリジリと詰め寄る先輩。


美形が不敵な笑みを浮かべて、しかも私よりもはるかに大きいのに。


その迫力に、いくら意気込んでいた私だって、勝てるわけないし…