俺様主人は時に甘い


「せ、んぱい…?」


「名前を馴れ馴れしく呼ぶのも、俺一人で十分。お前を最初に見つけたのは、俺だ」



最初に見つけた?


それは一体、どういう意味?



先輩の意味深な言葉に、鼓動が高鳴る。


コロコロ変わる先輩の態度が、私を惑わせる。


どういう反応をしたらいいのかも、わからないし。


そもそも男子の免疫が皆無な私には、固まるしか出来ない。



戸惑う私と目が合うと、先輩はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、私の腕を引いて引き寄せた。



「お前、もしかして変に期待してる?」



耳元で囁く先輩に、ぞわぞわっとざわめき立つ。


何なの?この、妙に色気たっぷりの声は。


ドキッとするような事を言われたわけじゃないのに、その声のせいで心臓が煩い。



「べ、別に…期待なんて…」



してない…


するわけないじゃない。



この人は私をからかうのを、今の楽しみにしてるんだから。



なのに、私…本当に期待してなかったーー?