俺様主人は時に甘い


先輩の言いたいことがイマイチよくわからなくて首を傾げる。


そんなことで、機嫌が悪くなってたの?


そもそも、何で先輩が機嫌悪くなるの?



「あの〜、一体何が言いたいんでしょう」


「お前、馬鹿か」



カッチーン!


馬鹿って何よ!ホント失礼な奴っ!


今のだけで話の糸が見えるわけないじゃない。


…なんて、口が裂けても言えるはずはなく。



イライラと一緒に、言葉を飲み込む。



もういい。


こういう人は相手にしないのが賢明だ。


私は洗濯を後回しにして、今度こそ本当に背を向けて歩き出すと。



「お前をからかっていいのは俺だけだ」



ボソッと、少し照れたような声が耳に届いた。


思わず足を止め、振り返る。


ほんのりと頬を赤くした先輩の姿に、パチパチと瞬きを繰り返す。



今のは幻聴?


本当に、先輩だよね?



今、“俺だけだ”って…間違いなくそう言ったよね?