いつの間にか、水道には私と先輩だけで。
嵐が去った静けさのようだ。
い、今の…一応助けてくれたんだよね?
ちらっと先輩を盗み見る。
ゔ……何か、非常に機嫌が悪いようですけど……
先輩は水道に寄りかかって腕を組みながら、眉間に深い皺を刻んでいる。
今は話し掛けちゃまずい。
逆鱗に触れる前に、ここいらで退散…
「…おい」
そそくさとその場を後にしようと背を向けた途端、先輩の地を這うような低い声が聞こえ、思わず「は、はいぃっっ‼︎」とビクッと身体を強張らせた。
恐る恐る振り返る。
ゔ…こわあぁぁ……
「何で、しょうか…」
「お前さ、何馴れ馴れしく名前で呼ばれてんだよ」
「…は?」
「しかも、猫みたいなんてからかわれやがって」
えーと…先輩は何が言いたいんでしょうか?
確かに、小野寺先輩は早速“雅ちゃん”って呼んでくるし、猫みたいなんて言われちゃったけど。
それはどこの誰かさんも同じなのでは?

