部員の前で指示を出す先輩は、意地悪でも俺様でもなかった。
ましてや王子様でもない。
普通の男子。普通の高校生だった。
「いつもあんな感じだったらいいのに」
サッカーを楽しそうにする先輩。
仲間と笑い合う先輩。
後輩に慕われてる先輩。
部活で見た先輩が、私の中では一番高校生らしくて好きだけどな。
なんでいつもあんな仮面を被ってるんだろう。
みんなの前で王子様を演じる必要なんてあるんだろうか。
ま、私には関係ないことだけど。
「さてと、次は洗濯だ……っ、イタタタ」
椅子から立ち上がろうとすると、ピキキと痛む腰に声を上げた。
久しぶりに無心で動いたせいで腰が痛い。
トントン、と叩きながら汚れ物を持って水道に向かうと、サッカー部はちょうど休憩に入ったところだった。

