「だから、陽平のことは誰よりもわかってるっつーか」



だけど、先輩はまたすぐにへらっと笑っていつもの調子に戻る。



何故だろう。


先輩がいつも通りに戻って、なんか凄くホッとした。




「とにかく。俺、陽平にミヤのこと渡すつもりねぇから」



ホッと胸を撫で下ろしていると、先輩があり得ないことを口にして、咄嗟に先輩を見る。



「せ、先輩…?」



気のせいかな?


少し、顔が赤い気がするのは。


そんな顔されたら…こっちまで移るじゃん…



「俺、外で着替えるから、お前はここで着替えろ」


「はい…」



真っ赤な顔を隠すように、お互い視線を逸らし合う。


傍からみたら怪しすぎるぐらいぎこちない二人だと思う。


先輩はドアを開けると、振り返って。



「鍵、ちゃんと締めろよ。ヤローが入って来るから、ノックされても開けんなよ」



そう言って、部室から出て行った。