これをどんな思いで書いたのかな……
その時にはもう自分がいない。
それはどんなに怖くて、暗い世界なんだろう。
封筒に書かれた【慶吾へ】の文字が震えてるのは、手に力が入らないからじゃない。
悲しくて、苦しくて、辛くて。
必死に涙を抑えながら書いたからだ。
この手紙をお父さんから受け取った時、お父さんは泣いた。
『ありがとう』って何度も言いながら、大粒の涙を流したんだ。
「私、あっち行ってますね」
先輩は俯き、手の中の手紙を握り締めている。
少しクシャっとした手紙に、一粒雫が落ちた。
今は一人になりたいかもしれない。
私がゆっくりと背を向けて、一歩踏み出した時。
先輩の手が、私の手首を掴んだ。
「先輩……?」
「ここに…いて」
先輩の口から聞こえた涙混じりの弱々しい声に胸が震える。
こんな先輩、見たことない。

