「親父から?」
先輩は信じられないと言わんばかりに目を見開き、恐る恐る手紙を受け取る。
その手は微かに震えているように見えた。
封筒を見つめたまま固まる先輩。
そうなるのもわかる。
だって、もうこの世にはいないーー、もう会いたくても会えない人からの手紙なんだから。
「お父さんと花火大会に行く約束をした日、これを預かりました。自分は卒業式まで生きていられるかわからないから預かっててほしいと。もしもの時は雅ちゃんから渡してくれって」
その時のお父さんの目を、私は忘れられない。
切なげに揺れる瞳が真っ直ぐに私を捉えて目を離せなかった。
「本当は断わろうとしたんです。お父さんが亡くなるなんて思いたくなかったし」
受け取ってしまったら、それが現実になってしまいそうで怖かった。
お父さんがあと数ヶ月でいなくなってしまうなんて考えたくなかったんだ。
「でも、あの真っ直ぐな目でお願いされたら……断り切れませんでした」

