所々から線香の匂いがする。


お寺からは喪服に身を包んだ参列者達がぞろぞろと出てきて、悲しみに打ちひしがれている。


その姿を横目に、私と先輩は桶に水を汲むと砂利を踏みしめながらお父さんの墓石に向かった。



「お父さん、お久しぶりです」



お父さんの墓石に挨拶をする。


ここに来たのは三ヶ月振りだ。



墓石に水を掛け少しだけ生えた雑草を抜くと、花立に水を入れて花を差した。


線香に火をつけて線香皿に置くと、先輩と一緒に手を合わせる。



少しして目を開けて隣りの先輩を見ると、先輩はまだお父さんと話していた。


高校を無事に卒業したこと。


それから大学に合格したことを報告しているんだと思う。



先輩はお父さんと和解するまでは就職希望だった。


先生伝いに、お父さんから大学の学費は気にするなと言われていたらしいけど。


あの当時はまだお父さんのことを許せてなくて、「意地でもあんな奴に学費出してもらうかよ」と思っていたみたいだ。