「雅ー!笠原君来たわよ」



一階からお母さんの声が聞こえ、慌ててブレザーを羽織る。



リボンはOK!曲がってない。


髪は…ん〜、時間なかったからあんまり上手く出来なかったな。


学校に着いたら一先ず先に直そう。


忘れ物はなし!昨日の夜も例の物がちゃんと入ってるかチェック済みだし。



「雅ー⁉︎早くしなさーい!」


「今行くっ」



最後に全身鏡で軽く身なりを確認すると、私は玄関へ急いだ。



「お待たせしました」


「おう」



花火大会から時間は更に流れ、今日は先輩の卒業式。


明日から先輩は学校にいない。


最後の日は、一緒に登校したくて先輩にお願いした。



「行くか」



そう言って、先輩は少し恥ずかしそうに左手を差し出す。


へへ、と顔を綻ばせて、私はその手に自分のを重ねた。



「先輩、卒業式泣いても私は笑いませんからね」


「バーカ。笑うかよ。俺よりも雅の方が泣くんじゃねぇの?」