だけど、すぐにわかった。
今のは、精一杯の先輩の強がりと気遣い。
私にこれ以上心配を掛けないためだ。
私が幼な過ぎるばっかりに、先輩に気を遣わせてしまった。
ダメダメだな、私……
先輩が辛い時、私は先輩を支えられるような人になりたい。
……早く、大人になりたい。
先輩は穏やかな顔で私の頭をぽんぽんと撫でた。
まるで私の心の中を見ていたかのようで。
“お前はそのままでいいよ”
私の勝手な解釈だけど、そう言われた気がした。
「帰るか」
「…はい」
歩き出す。
一歩、また一歩。
先輩は先生、私はお母さんが待つ家に。
「俺、マンションは売ろうと思う」
私の家に送ってもらう最中、先輩は唐突に話を切り出した。
「陽平とあの家で二人で暮らすわ。あそこはもともと家族四人で暮らしてた家だし、もう二人になっちまったんだからその方がいいだろ」