どれぐらい経っただろうか。


帰る人の群れはいつしか解消されて、会場は係員がゴミを拾いをしている。


ちらほらと警察の見回りの姿もある。


そろそろ帰らないと、ここにずっといたら補導されてしまう。


さっきから警察の人が時計を見ながらチラチラとこっちを気にしている。




先輩をチラリと見ると、真顔で遠くの方を眺めていた。


すっかり涙は引いたようだった。


先輩は今、何を思っているのかな。


私は先輩のために何が出来るだろう。


考えても考えても、答えは出てこない。




「何お前、見惚れてんの?」


「ほぇ?」



今までずっと何も喋らなかった先輩が、急に変なことを口にしたせいで思わず素っ頓狂な声が出た。



「キスしてほしいならまた後でな。今はお廻りの目がある」



ニヤッと不敵な笑みを浮かべる先輩に、「ち、違いますっ‼︎」と反論するも、先輩に「強がらなくていいって」と軽く流されてしまった。


まさかのこのタイミングで。


意地悪王子、復活!