俺様主人は時に甘い


「雅に親子喧嘩してこいって言われたろ?あれ、マジでありがたかった。病室に戻って全部言ってやったよ。馬鹿野郎、母さんは最後まで親父が迎えに来てくれるの待ってたんだぞ、この意気地なしが!って」



お母さんは裏切られてもお父さんを愛する気持ちは変わらなくて、お父さんからの連絡を待ち続けた。


お父さんは連絡する勇気も会いに行く勇気もなくて、遠くから見守るしか出来なくて。


すれ違った二人は、後悔を残したまま永遠の別れを迎えた。



「ホント、馬鹿だよな……母さんも親父も…」



先輩の横顔が、今にも消えてしまいそうなぐらい悲しげに見えて、先輩が何処かへ行ってしまわないように手をきつく握った。


花火は終盤に差し掛かり、色んな花火が連続して打ち上がるスターマインに差し掛かっている。


周りの観客は花火に夢中だ。



「先輩、今なら誰も気付きませんよ。もちろん、私も。花火に夢中ですから」