「雅ちゃん。スイカ切ったから、冷たいうちに食べよう」
季節は夏になった。
蝉が鳴き、太陽の日差しが地面を照り付ける音が聞こえて来そうな程、暑い日が続いている。
今は私とお父さん二人でお留守番中。
先輩は午前中部活、先生はスーパーに食料品の買い出しに行っている。
私は先輩達の家によく遊びに来ていて、たまにこうやって二人の留守を預かっている。
お父さんは私の事を名前で呼んでくれるようになって、娘のように接してくれている。
「はい。頂きます!」
お父さんが切ってくれたスイカに齧り付くと、口内はスイカの冷たくて甘い汁で満たされた。
「どうだ?甘いだろ」
「物凄く甘いですね!このスイカ!」
思わず唸っちゃうほど甘い。美味しい。
食べながら思う。
もう夏も後半に差し掛かって……
近付く、お父さんの最期の日が。