「ったく」
ため息交じりの先輩に、自分がいけないのにも関わらず地味に傷付く。
ああ。今、絶対面倒くさい女って思われた。
後ろにいて姿は見えないけど、先輩の面倒くさいオーラが手に取るように見える。
なんで私ってこんなに可愛げがないんだろう。
些細な抵抗なんてしなければ良かった。
お父さんは私のこと可愛らしい娘さんだって言ってくれたけど、私は全然そんなんじゃないよ。
素直にならないと先輩に愛想尽かされちゃう。
平々凡々の吠えるしか脳がない馬鹿で間抜けで可愛げのないブスな負け犬が先輩に捨てられない為には、せめて可愛げがあって素直な負け犬にならなきゃ駄目だ。
“先輩”と、口を開きかけたその時。
「雅」
優しい耳障りの良い声が私の名を呼ぶと、同時に背中に大好きな温もりと重みを感じた。
先輩の筋肉が程よく付いた腕で私を後ろから抱き寄せて、私の首元に顔を埋める先輩に胸の奥がキューっと締め付けられる。

