俺様主人は時に甘い


「そういえば先輩遅いですね。私見てきます」



これは半分逃げ。


このままだと、きっと私は泣いてしまうから。



お父さんはとても素敵なお父さんだ。


最初はお母さんが妊娠中に不倫したって聞いてあんまり良い印象がなかった。


だけど、直接会ってみて息子達への愛を感じた。


たった一度の過ちを、凄く反省してるのもわかる。



お父さんの笑顔を見てると、私のお父さんも私のことこうやって大事に想っていてくれたのかなって。


先輩と先生が羨ましく感じたんだ。




病室を出ると、廊下の端に並ぶ長椅子に先輩の姿があった。


目尻に滲んだ涙を手で拭うと、先輩の隣りに座る。



「先輩。入らないんですか?」


「……」


「話さなくていいんですか?」



病院に来る前は、先輩にとってお父さんと和解することが幸せなのかわからなかった。


お父さんが最低な人だったら、このまま会わない方が幸せなのかもしれないし。