俺様主人は時に甘い


「父さん、馬鹿なこと言ってる暇あったら早く治して下さい」



一見呆れたように言った先生の目は、その言葉とは裏腹に揺れている。


先生もそうやって冗談を交えないと、堪えてたものが溢れてきてしまいそうなんだと思う。



「はは、そうだな。病気になんて負けてらんないな」


「そ、そうですよ!ガツンと一発かましてやればいいんですよ」



ここは病院で、お父さんは入院中なのに。


お父さんと話してるうちに、お父さんが余命半年だってことが頭から消えていた。



だってお父さんはこんなにも元気で。


今、この瞬間、私と同じ空気を吸って。


言葉を交わして、心を交わして。


時間を共有しているのに……


あと半年だなんて、信じられない。