「私、今の高校に進学してよかった。先生のクラスになれたし……先輩と出会えたから。今の私は大事な人が沢山いて幸せです」
思えば、この高校に行くと決めた時が初めて自分の気持ちをお母さんに言えた時かもしれない。
学力的に厳しかったけど、お母さんは止めなかった。
それどころか、私から自分の気持ちを言ったことが嬉しかったのか、それはもう飛びきりの優しい笑顔で「やってみなさい」って言ってくれたんだっけ。
うん、あの選択は間違えてなかった。
「ありがとう」
お父さんが穏やかに微笑むと、ペコッと頭を下げる。
「え?え?お父さん?」
「君のような心が暖かい人が慶吾の側にいてくれるなら安心して逝ける」
「お父さん……そんな…逝けるだなんて、」
“言わないでください”と言おうとしたけど、最後まで言えなかった。
お父さんの穏やかな笑顔の裏側に深い悲しみが見えて涙が込み上げてきた。

