俺様主人は時に甘い


お父さんはしみじみと言うと、先生までもが「ああ、そうだね」と微笑む。



「慶吾は落合に救われたな。いや、慶吾だけじゃなく俺ら家族が。落合がいなければ、慶吾が一歩踏み出すことはなかったかもしれない」



私が、先輩の家族を救った……


私がいなければ先輩が前に進む事はなかった……?



「先生、お父さん。それは違います。私が“救った”んじゃありません。私が“救われた”んです」


「どういうこと?」



思い出す、中学までの私を。


引っ込み思案で、自分の気持ちを押し殺して。


周りの反応ばかり気にしてたあの頃。



「私、中学までずっと一人ぼっちで、友達もいませんでした」



当時、親友だと思っていた子がいたけど、結局親友だと思っていたのは私だけだった。


その子が転校してすぐメールをしたけど返信はなく。


そのうち宛先不明で戻ってくるようになった。


当然、電話番号も変わっていて。



私は本当の意味で一人ぼっちになった。