先生が部屋から出て行くと、途端に静まり返る室内。
先輩は相変わらず何も話さない。
引っ込み思案の私が、初対面の人といきなり二人っきりはちょっとハードルが高過ぎる。
先輩はいるけどもはや空気化してるし。
頭の中で何を話したらいいのか思考を巡らせていると、先にお父さんが口を開いた。
「二人は付き合い始めてどれぐらい経つのかな?」
「まだ付き合い始めたばかりなんです」
「そうか。二人の雰囲気を見てると、もう数年一緒にいるように見えるな」
「そんなに長く見えますか?」
お父さんは「ああ」と言うと、窓の外に目を向けてポツリポツリと過去を思い出すように話し始めた。
「母さんと離婚して以来、私は慶吾となかなか会えなくなってしまってね。仕事を装ってよく学校に様子を見に行っていた。それでも慶吾の姿を確認出来るのは十回に一回ペースだったが、それでも私は幸せだった。ある時、あれは慶吾が中学に上がって少し経った頃だ。いつものように校庭を覗いたらちょうど体育で校庭に慶吾がいてね。その姿を見て愕然としたんだ。私は慶吾をここまで追い詰めてしまったんだってね」
お父さんは小3までの先輩しか知らないけれど、小学生の時はとにかくヤンチャでガキ大将だったらしい。
そんな先輩が、中学生になった途端優等生のように落ち着き始めた。

