俺様主人は時に甘い


むっ。何よ、そんな笑わなくたっていいじゃん。


さっきの甘い先輩は何処に行っちゃったのよ……



先輩に一言言ってやりたい気持ちを抑えて顔を上げると、はは、と笑うお父さんが目に入った。



「可愛らしいお嬢さんだ」



ああ……やっぱり、親子だ。


お父さんにまで笑われてしまうなんて。



「慶吾がいつもお世話になってます。そんな畏まらず、ゆっくりして行って下さい。今日は学校での二人の様子や色んな話を聞かせてくれないかな?」


「は、はい!勿論です」



お父さんは「ありがとう」と言うと、私の後ろに立つ先輩に目を移して「慶吾」と呼び掛けた。



「久しぶりだな。小3以来か……立派になったな」



それは愛しいものを見るような優しい眼差しで、お父さんがどれだけ先輩を大事に想っているのか伝わってくる。



数年振りに顔を合わす親子。


感動の再会……とまではいかないけれど、少なくともお父さんは嬉しくて堪らないはず。