微かに香る消毒液の匂い。


ピッピッと規則正しく鳴る電子音。


ナースステーションは、ナースコールが鳴ってバタバタと騒がしくなった。




「今日は来てくれてありがとう」


先生は半歩後ろを歩く私を振り返りながら言う。


その表情は本当に嬉しそうだ。



「いえ」


「それと、あいつを連れてきてくれたことも感謝する」



私達の後ろを二、三メートル程離れて歩く先輩をチラッと見た先生は、穏やかに微笑んだ。



ここは総合病院。


先輩のお父さんが治療の為に入院している。


今日は先輩と一緒に、お父さんの好きなオレンジ色の花を持ってお見舞いにやってきたのだ。



「慶吾の彼女も来るって言ったら凄い喜んでてさ。このパジャマ変じゃないか?なんて、今まで気にしたこともないくせにな」



そう言って、クスクス笑う先生。


今日の先生は凄い優しい表情をしている。


学校での先生は爽やかだけれど、やっぱりそれは教師としての顔で。


この顔が先生の素なのかもしれない。