本当は余命半年と宣告されたお父さんの元へすぐに飛んで行きたいはず。


だけど積もった憎しみと二人の間に出来た溝が深過ぎて、身動きがとれなくなってしまった。



もう、そろそろ良いと思う。


二人は十分苦しんだ。


先輩と先生と、そしてお父さんと。


これからは家族三人で幸せを築いていく番だ。



先輩は不安なのか迷っているのか、顔を歪める。




「先輩なら大丈夫です。この私に遠慮なく自分の気持ちや思ってることズカズカと言えるんですから。そんなの先輩しかいません」



鈴菜に会いに行くと報告した時に、先輩に言われたことをそっくりそのまま返す。


先輩はキラキラ王子を演じて、本来の自分の姿を隠してる。


自分の気持ちを我慢し続けた結果、キラキラ王子の仮面を被った先輩が誕生したと先生が言っていた。


そんな先輩が、唯一先生以外に初めから素を見せたのが私で。


『あいつを助けてくれる?』


先生は私なら先輩の心を動かせると思ったようだった。



「お前、生意気。ペットのくせに」



そう言った先輩には穏やかな笑顔が戻っていて。


それが堪らなく、嬉しく。


そして、心から愛しいと思った。