俺様主人は時に甘い


家族バラバラのままお父さんが亡くなったら?


兄弟の間に、心の底から笑い合える日が来るのだろうか。



自分が生きていれば時間を掛けて家族の絆を修正していくことも出来たはずだけど、余命半年と宣告された今、お父さんには時間がない。


お父さんの最後の父親としての役割は、家族の絆を復活させて愛する息子達の幸せを願うことだ。



「例え会ったとしても、多分あいつのこと許せないと思う」



簡単に許されることじゃないということは、お父さんは百も承知のはず。


だけど、それでも先輩に会いたい。


それだけ、お父さんの気持ちは強い。



「なら全部……今思ってること全部、お父さんにぶちまけたらいいんじゃないですか?」


「ぶちまける?」


「憎い気持ち、お母さんを失って悲しく辛い気持ち、一人で残されて孤独な気持ち……本当は、お父さんと会いたかったという心の奥底に眠る気持ち」


「っっ‼︎なんで……」



目を見開くと、言葉に詰まる先輩。


その反応…やっぱり先輩はお父さんに会いたかったんだ。