俺様主人は時に甘い


自分の馬鹿さ加減に嫌気が差してくる。


俯きながら心の中で自分を叱咤していると、先輩が頭にぽんっと手を乗せた。



「気を遣わせて悪いな。けど、大丈夫だから」


「先輩……」



ホントに大丈夫なんですか……?


私を安心させようと無理に笑ってませんか?


私には本音を…弱い部分の先輩も見せて下さい。



「俺はあいつのこと父親とは思ってない。あいつのことは許せない」



“許せない”


その言葉にどれ程の怒りが込められているのか。


先輩の目が急に鋭いものに変わって、ぞくっと寒気がした。



「あいつが不倫なんてしなければ、母さんは過労死なんてせずに済んだ。今頃、その辺の家族となんら変わらない生活を送ってたはずだ」



昨日、先生からも聞いた。


先輩がお父さんのこと憎んでること。


確かにお父さんが不倫なんてしなければ、そもそも離婚することもなく、お母さんが働きすぎて過労死することもなかった。