「中学卒業のとき。過労死だった」
「過労……死」
「朝から夕方まで正社員で働いて、夜は会社には秘密で副業。あの人に休みなんてほぼなかった。俺のせいだ……俺がいなければ、母さんはあそこまで働かなくて良かった。過労で死ぬことなんてなかったのに」
肩と、声が震えてる。
先輩の背中が小さく、そして弱々しく見えた。
この部屋に初めて来たとき感じた違和感。
一人で住むには広すぎるし、だけど先輩だけ暮らしてるとは思えないような感じもした。
殺風景で生活感がないんだけど、なんというか…棚の上の置物やカーテン、ソファなどの家具に女性っぽさを感じたからだと思う。
先輩が置物を置くとも、カーテンにオレンジ系の色を選ぶとも思えない。
そうか。これはお母さんの跡だったんだ。
ここはお母さんと一緒に二人で暮らしてきた家なんだ。
「先輩はそれからずっと一人でここで暮らして来たんですね」
先輩にはお父さんと先生もいる。
だけど一緒に暮らさず、ずっとここで一人で生活している。

