俺様主人は時に甘い


先輩は目をまん丸くして驚いた後、「お前ならいいよ」とふっと笑った。


その笑顔がいつもよりも暗くて。



心が痛い……



「昨日は送れなくてごめんな。ちゃんと帰れたか?」


「大丈夫です。先生に車で送ってもらったので」



「そうか…」と先輩が呟く。


この間と空気が重く感じる。


先輩といる時間をそう思うなんて初めてのことだ。



「陽平から聞いたんだろ?」



多分、先輩が言ってる“こと”と私が聞いた“こと”は同じだ。


私がコクンと頷くと、先輩が「こっちにおいで」と私を手招きした。


ベッドの縁に先輩と並んで座る。



少しの沈黙の後、先輩がポツポツと話し始めた。



「俺が小三の時に親が離婚した。父方の祖母が跡取りを欲しがって、だけど母さんも引き下がらなくて。結果、陽平は長男だから跡取りとして父親に、俺は母さんに引き取られた」



先輩は何ともないような素振りで淡々と話しているけど、本当は辛い思い出なんだと思う。


組んだ指を必要以上に動かして、話し方も少し早口になっているようだった。