「落合、送るよ」
「え?でも……」
寝室のドアへ目を向ける。
このまま帰っていいのかな……
先輩、大丈夫かな……
「ああなったら放っとくのが一番なんだよ」
そう言って、先生は寝室のドアをノックすると、「落合送ってそのまま帰るから。少し頭冷やせよ」と先輩に声を掛けた。
「ほら、もう遅いから」
先生は私を帰るように促すと、先に玄関に向かった。
寝室のドアをノックして、「先輩」と呼び掛ける。
応答はない。
「今日はとりあえず先生と帰ります。また明日学校で……」
本当ならもっと気の利いたことを言いたかったんだけど、状況もわからない今、なんて言ったらいいかわからなかった。
私は「お邪魔しました」とだけ言うと、先生の待つ玄関へと急いだ。
「うちの馬鹿弟がごめんな。本来、彼女のことはどんな事があっても送ってけって言いたいところなんだけど」
「いえ……」
先輩は私の事なんて眼中にないぐらい動揺していたようだった。

