「そろそろ許してあげてもいいんじゃないか?」
先生がテーブルに茶封筒を置くと、先輩はそれを手にとって中を見る事なく近くのゴミ箱へ捨てた。
「あいつに言っとけ。こんな事したって無駄だって」
「はあぁ……お前、もう少し大人になれよ」
呆れたと言わんばかり溜め息を吐く先生。
先輩は何も言わず、隣りの寝室へ行ってしまった。
扉の閉め方が先輩の機嫌の悪さを物語っている。
「ごめんな。変なところ見せて」
「いえ」
さっき立ち上がった時に見えた先輩の表情が今まで見たことないぐらい悲しそうで胸が苦しくなった。
そういえば、先輩と先生が兄弟だって教えてくれた時も初めてここに来た時も、先輩は家族の話になると決まって辛そうな表情になっていた。
先輩の家族のこと、私は何も知らない。
先輩がなんであんな顔をするかもわからない。
本当は先輩のことをもっと知りたいし、力になれるならなりたい。
もっと甘えてほしいのに、先輩は家族の話はしたくなさそうで触れようとしない。
私じゃ、先輩の力になれないのかな。

