「落合」
「はい」
私と目が合うと、ニコッと笑って次の人を呼ぶ。
一瞬の、至福の時。
それが過ぎると、少し寂しさを感じる。
そっと目を閉じる。
余計な物を見ずに、その声だけを拾う。
「よーし!今日も欠席者ゼロだな」
発音も滑舌も良く、聴きやすくて通る声。
低過ぎず明瞭なその声からは、優しさと温かさが感じられて。
ーーー私はこの声に、恋をした。
「雅。また聞き惚れてたの?」
ホームルームの後、親友の森野 鈴菜(モリノ スズナ)が、呆れたと言わんばかりにため息を吐きながら言った。
「だって先生の声、素敵なんだもん」