「平気に見えます。こういうシチュエーションに慣れてるような感じ」
拗ねたように口を少し尖らせる。
慣れてるって言葉を口に出した途端、なんか胸の奥の方がモヤモヤっとした。
先輩は過去に付き合った人はいるのかな。
この家に他の女性を連れて来たことがあるのかな。
先輩はどこまで経験済みなのかな。
ヤダ…過去に嫉妬するなんて、最低だ。
ふいっと先輩から顔を逸らす。
せっかくの二人っきりなのに、気分は最悪だ。
ほんの少しの間、お互い何も言わないでいると、突然先輩が私の右手を取った。
そのまま私の手のひらを自分の胸に当てる。
「先輩?」
「全然平気じゃない。ミヤが隣りにいるだけでこんなになる。わかる?」
手のひらに伝わる先輩の胸の鼓動。
それは想像よりもはるかに速く胸を打っている。
「嘘……」
「嘘じゃねぇよ。好きな女といて緊張しないわけないだろ」
私の手を離すと、言わせんな馬鹿、と今度は私の髪をバサバサと掻き回した。

