俺様主人は時に甘い


「おい、行くぞ!」



私が腕を掴んでいない方の男が、先生の姿を見た途端慌て出す。



「行かせない!今まで流した噂全部、嘘だと認めるまで」


「あー!わかったよ!全部撤回するから離せ」



最後に腕を大きく振って私の手を払うことに成功すると、男達は先生と逆方向に走って逃げて行った。



「落合!大丈夫か?」



先生が眉を寄せながら私の顔を覗き込む。



「大丈夫です」と、へらっと笑ってみせると先生はホッと胸を撫で下ろし、私の頭にぽんっと手を置いた。



「よく頑張ったな、落合」



そう言った先生の視線の先には、顔を涙でグチャグチャにした鈴菜がいて。


鈴菜は涙を手の甲で拭うと、私に近付いてきた。



「馬鹿雅っ‼︎」


「す、ずな…?」



感動の再会だと思っていたのに、予想に反して鈴菜に怒鳴られてキョトンとしてしまう。



「一人で二人の男に立ち向かって……今回は人がいっぱいいたから良かったけど、誰もいなかったら取り返しのつかない事になってたかもしれないんだよ⁉︎」