「このままでいいから聞いてくれる?」
おばさんがそっと階段を降りて行くのが視界の端に映った。
「うち母子家庭で、女手一つで育ててくれるお母さんに心配掛けないように自分の気持ちをずっと隠してきたの。熱が出ても、寂しくても、辛くても……何があってもお母さんに知られないように笑顔でいるように努めてきた」
最初は我慢出来た。
お母さんのこと大好きだから。
疲れて家に帰って来た時ぐらい、休んでほしいから。
私の事で疲れさせたくなかった。
「そのうち、自分の気持ちをお母さんどころか友達にも言えなくなって。中学の時、唯一仲の良かった友達にさえ本音を言えなくなっていたの」
それが引っ込み思案の私の誕生話。
小さい時は好奇心旺盛で人懐っこくて、誰とでもすぐ仲良くなれていた私が、人付き合いがいつの間にか苦手になってしまった。
「唯一の友達が中学の時に引っ越して、私はずっと一人ぼっちだった」

