俺様主人は時に甘い


「俺と同じだから、かな」


「同じ…?」


「俺も母親に引き取られて。母親が死んだ後は叔父さんに面倒見てもらったから」



何かを思い出してるように遠い目をする先輩。


胸が苦しくなった。



先輩も私と同じだったんだ。


お母さんと、お母さん亡き後は叔父さんに心配を掛けたくなくて封じ込んだ“自分”がいたんだと思う。



私はお母さんが忙しくてすれ違いの生活だとはいえ、休日にはお母さんにうんと甘えられる。


でも、先輩はこの広い家に一人で……


どれだけ寂しい思いをしてきたんだろう。


どれだけ我慢してきたんだろう。




先輩の傷がある頬にそっと触る。


学校では王子様で、周りには弱みを見せない先輩。


そんな先輩が、私の前で今にも泣きそうな顔をしている。



「ミヤ…」


「傷…痛い?」



見つめ合う、私と先輩。


時計の針の音と、二人の胸の鼓動がリンクして。


まるでこの世界に二人しかいないような感じがする……