「お前はホントお人好しだな」



先輩の消毒を終えると、なんで中学校にいたのか問い詰められた私は、険しい顔の先輩と目を合わせないように視線を彷徨わせながら鈴菜の家に何度か足を運んでいる事を話した。


終始無言の先輩の表情は、更にどんどん険しさを増していき、最終的には盛大な溜め息を吐いて“お人好しだ”と言われてしまった。



「ミヤはあいつに何されたか覚えてねぇの?」



先輩が私を呆れるのも無理はない。


あの時の事はまだ忘れられなくて、下駄箱を開ける度に動悸がする。


下駄箱内の悍ましい光景は、私の脳裏に張り付いて消える事はない。


だけど。



「覚えてます……覚えてるけど、鈴菜のこと嫌いになりきれません」



あの朝の鈴菜は怖くて、裏切られたと思った。


だけど、私が知ってる鈴菜が全部偽物だったなんて思えない。


最初に私に話し掛けてくれた時の笑顔は、絶対に本物だったはずだから。