俺様主人は時に甘い


「私……先輩が好き、過ぎて…苦しい…」



泣き過ぎて声が詰まる。


伝えたいことがたくさんあるのに、上手く言葉に出来ない。



「ペット降格されちゃったけど……っ、先輩は私のこと、き…嫌いかもしれないけどっ」



ひっく、ひっくと嗚咽を繰り返す。


止めどなく溢れる涙を何度も何度も手の甲で拭う。


それでも涙は流れ続けて、私の顔はグチャグチャだった。



「先輩のこと好きでいてもいいですか…?」



そう言い終える前に、先輩が私を抱き寄せた。



消毒液の匂いに混じって、少し汗の匂いがする。


嫌な匂いじゃなくて、ドキドキする男の人の香り。



「お前、ホント馬鹿」



先輩は、ふっ、と笑ってそう言うと、ギュッと更に強く抱き締めた。



「俺は、お前はてっきり陽平を好きだと思ってた」



掠れた切ない声に、胸が張り裂けそうになる。



「辛かったんですよ…この前の階段でのこと。避けられるし、好きな人に勘違いされるし…」