俺様主人は時に甘い


気付いたら歩道に倒れ込んでいて。


ここにいるはずのない先輩が、私に覆い被さっている。



「せ、せんぱ……い?」



何?何が起こったの?


さっきまで壊れかけていた私の頭は、咄嗟に状況の判断をつけられずにいる。



わかるのは腰に感じる痛みと、先輩の温もり。



「お前!何やってんだよ‼︎」



身体を起こした先輩が、険しい顔で私を怒鳴りつける。


整った顔に擦り傷が出来ていて、そこからじわりと鮮血が滲み出てきていた。



「信号ちゃんと見ろよ!俺が来なかったら、お前死んでたぞ‼︎」


「信号……?」



ハッとした。


今いる場所とさっきいた場所、そしてその上空を見る。



地面には白で書かれた横断歩道。


電信柱の中程に取り付けられた歩道専用の押しボタン式の信号は、赤く点灯していた。



「あ……」



私、赤信号で渡ろうとしてたんだ…


全然意識がなかった。



そこが横断歩道で、信号が赤だなんて。


あの時の私には全く情報が入って来なかった。