猫撫で声のその子は、先輩の話に全く聞く耳を持っていない。
それどころか、先輩の腕に胸が当たるぐらい密着して、常に上目遣いで先輩を見ている。
そして何よりも、先輩に気付かれないように私をちらっと見ては、ふっ、と勝ち誇ったように笑う。
「今日は無理」
「あっ!私、今日はパスタがいいなぁ。慶吾もパスタ好きだよね?二人でご飯食べに行くと、いつもパスタだし」
先輩と二人で…?
いつも…?
「春香。悪いけどまた今度な」
「えー、今日がいいのにぃ!」
「だから今日は、」
「無理、なんて言わないよね?」
何か含みのある笑みを浮かべる彼女に、先輩がグッと言葉を飲み込んだのがわかった。
異様な雰囲気。
あの俺様先輩が押され気味なのも気になるけど、先輩が俺様キャラをこの子にも見せてることがショックだった。
「…わかった」
先輩のその言葉と同時に、私はその場から走って逃げた。

