「落合。笑ってるけど俺の言ってる意味わかってる?」


「へ?」



先生は私の耳に口を寄せると、わざと艶っぽい声で囁いた。



「キスするぞ、って言ってんだけど?」



なな、なっ…何を言って…っ‼︎


ってか、ここ学校です!廊下です!周りに沢山生徒います!先生大好きの雪乃だってこっちをずっと睨んでますっ‼︎


誰かに聞かれたら、ヤバいですって‼︎



ズササササ、という効果音が似合うぐらい大袈裟に先生から後退る。


クスクスと肩を揺らす先生。


むむむ。笑ってる場合じゃないでしょ!


先生の馬鹿ーっ‼︎



「警戒し過ぎ。さすがにここではしないから」



警戒し過ぎって、そりゃするでしょう‼︎


ここではしないとか、そういう問題じゃないしっ‼︎


もしここが二人っきりの密室だったらしちゃうんですか⁉︎



もうっ‼︎


先生の生徒を思う気持ちに感動してたのに、これじゃ台無しだし。


私の感動を返してほしいよ……



「真っ赤な顔、早く治せよ」



先生はそう言って、背中を向け、ヒラヒラと手を振りながら歩き出す。


なんか、今のでどっと疲れた。



まさか先生がこんな大胆で、Sっ気があるとは思わなかった。


さすが、先輩のお兄さんだ…