王子を追うように一気に野次馬が消え、いつもの静けさを取り戻した中庭。


未だに、頭のてっぺんに先輩の手の温もりを感じる。


私の好きな人は先生のはずなのに、心臓が今もなお早鐘を打ち続けている。



本当は、笠原先輩に会ったら聞きたいことがあった。


何で私をマネージャーに推薦したのか。


そもそも何で私のことを知ってるのか。


なのに、口から出た言葉はこれまでになく無愛想で可愛げのない返事だけだった。



「いいな、雅。“ミヤちゃん”なんて呼ばれて」



まだうっとりして、あっちの世界に行ったままの鈴菜。



あんな眩しい人が間近にいたら、あっちの世界にいってしまうのも無理はない。


私だって、トリップしそうになったもん。



それに、何?あのミヤちゃんって。


ヤバイでしょ、王子にあんな風に呼ばれたら。


私、心臓がいくつあっても足りないよ…