「何があったか知らないけど許してやってよ。あいつ、今凄い荒れててさ。手付けられないんだよね」
先生は練習中の先輩を顎で指す。
確かに、最近プレーが雑というか、危なっかしいのが素人目でもわかる。
だけど。
「許してやってって言っても、嫌われたのは私の方ですから」
「え?どういうこと?」
「私、先輩に愛想尽かされちゃいました。私は前みたいに戻りたくても、先輩は嫌なんじゃないでしょうか」
あれから目も合わせてくれない。
会話は部活の事務的なことだけで、半径5メートルにすら入らない。
私、相当嫌われちゃったみたいだ……
「ふーん…」
田中先生は驚いて目を見開いた後、眉を顰めて何かを考えてるように頷いた。
それにしても、不思議だな。
先生がこんなに近くにいるのに、ドキドキしない。
しかも、前は緊張で何を話したらいいかわからなくて声も上擦っていたけど。
今はスムーズに話せる。