「慶吾と喧嘩でもした?」
先輩と話さなくなってから数日、世間はゴールデンウイーク真っ只中だ。
我がサッカー部は朝から晩まで毎日練習三昧で、もちろんマネージャーの私にも休みなんてない。
先輩と会えるのは嬉しい。
だけど、今のこの状況が悲しくて辛くて、溜息しか出ない。
水道でタオルを洗っていても、頭の中は先輩のことばかりで。
今日何度目かの溜息を吐いた時、いつの間にか背後にいた田中先生が私の耳元で言った。
「喧嘩…ではないと思います」
喧嘩だったら仲直りすれば元の状況に戻れるけど。
こればっかりは仲直りというわけにはいかなそうだ。
だって、私は先輩と前の状況に戻りたいわけじゃない。
私は先輩が欲しいんだ。
だけど、先輩が私に対して抱く気持ちはただのペットとしての独占欲だし。
そもそもペットの位置も降格されてしまった以上、私には為す術がない。