「あーびっくりした。蚊か…だよね」
「王子に限って壁叩くわけないよね」
「それにしても、やっぱり王子って素敵」
周りからそんな声が聞こえてくる。
皆、騙されてるよ!
王子でも叩きます!
苛つくと、壁も下駄箱も壊すんですよ!
だけど、男子の表情はさっきとは一転、恐怖が滲んでいるように見える。
どうやら気付いたらしい。
先輩の裏の顔に……
先輩は男子の耳元に顔を寄せると、周りに聞こえないようにコソコソと何かを言った。
「ひぃっっ……‼︎す、すみませんでしたっ‼︎」
男子はそれを聞くなり顔色を蒼くして、逃げるように走って行ってしまった。
「雅ちゃん、大丈夫⁉︎」
「何も出来なくてごめんね」
香澄ちゃんとみどりちゃんがそう言って抱き着いてきた。
二人の泣きそうな顔に、思わず顔が綻ぶ。
単純に嬉しかった。
二人が泣きそうになるまで心配してくれたことが。

