俺様主人は時に甘い


「あと…とにかく痛い奴だって」


「痛いってどんな風に?」


「笠原先輩と同じ中学らしくて、ストーカーに近かったらしいよ?オタクでいつもニヤニヤしながら絵描いてるし、平気で嘘もつくし」



みどりちゃんから聞く話は、どれも鈴菜のイメージからは程遠くて頭がついていかない。



「何それっ!酷い!誰がそんな噂流したの?」


「唯一同じ学年に森野さんと同中の男子がいてね、森野さんが学校に来なくなった途端にそいつが言いふらしたらしいよ」



みどりちゃんはそう言い終えた後、「あっ!」と声を上げた。



「噂をすれば」



反対側から歩いてくる他クラスの男子に視線を送るみどりちゃん。



「あいつ?」



香澄ちゃんも声を落とす。


二人の視線の先にいるのは、極普通の男子で変な噂を流しそうな人には見えない。


その男子が私達の横を通り過ぎようとした時。



「君、落合さんだろ?」



私を見るなり足を止めて、ニヤッと笑った。