「なぁ、ミヤは…」
先輩がそう何かを言い掛けた時、タイミング悪くチャイムが鳴った。
《三年三組、笠原慶吾。至急社会科準備室まで来るように》
この放送の声って、田中先生?
「あーっ、くそ‼︎」
空気読めよ、と苛立ち始める先輩にただ苦笑いを浮かべる。
私はというと、先輩が放送で呼ばれて少しほっとしてたり…
だって、キスした余韻で心臓が破裂しそうな上、先輩が何を言いたかったのか何となくわかっちゃったんだもん……
まだ心の準備が出来てないよ。
「下駄箱、バレたな」
チッ、と舌打ちをしながら髪を掻く先輩に苦笑いしか出てこない。
「一緒に謝りますよ」
「バーカ。お前は何も心配するなって」
「でも、私のせいだし」
先輩はふっ、と笑うと「ペットのくせに生意気」と言ってデコピンを食らわした。
それは痛くも痒くもなく、先輩の優しさを感じた一発で。
胸がきゅんと苦しくなった。