俺様主人は時に甘い


そうだ、私には先輩がいる。


一人じゃないんだ。


中学の頃の私とは違う。



私は先輩の目をしっかりと見つめると、覚悟を決めて頷いた。



今もガタガタと物音は聞こえてくる。


靴を履き替えるだけの物音じゃない。



一歩、また一歩と私の下駄箱に向かう。


もう少し……


あと数歩……


この下駄箱の反対側が、私の下駄箱だ。






「何してんだよ」



私の前を行く先輩の地を這うような低い声が耳に届く。



大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせて。


先輩の横に並ぶように前に出た。




「え……っ、嘘…」



目の前にいる人物の姿に、一瞬心臓が止まった。



それは、一度も犯人だとは疑いもしなかった人物ーーー。




「やっぱりお前だったんだな。森野」




……信じて疑わなかった人物が、そこにいたから。




なんで…


どうして…鈴菜が…?